インテリア トレンドレポート

Vol.8 身体感覚から生まれる空間
──建築家・大野友資が考えるオフィスのかたち

日常の感性から生まれる設計

大野さんは、設計を進める大事な要素のひとつとして依頼主との関係性を挙げている。「依頼主から受け取ったものをそのまま返すのではなく、読み取り、咀嚼して、新たな形で返す。そのやりとりの中に発見があり、建築が豊かになっていくと思っています」。

photo

設計で大切にしているのは、依頼主が自分ごととして関われること。「突然降って湧いてきた、とならないように。自分の文脈が続いている、と思ってもらえるような空間が理想です」。依頼者と設計者の意図が溶け合っている。そんな建築のあり方を目指している。

photo

大野さんはよく歩く。「歩いていて、うっとりする瞬間がある。何気ない風景が急に違って見えることがある。その小さな感動や発見を、設計にも活かしていきたい。認識の解像度が上がれば、日常は驚きに満ちていると感じられるんです」。

photo

代官山、中目黒、神泉、池尻大橋、渋谷といった、表情の異なる街が交差するエリアにある大野さんのオフィス。都市の多様性と変化を身近に感じながら、空間設計に向き合う。大野さんにとって、日常を歩くことが創造のためのリサーチなのだろう。


大野友資
DOMINO ARCHITECTS代表/FICCIONES所属/東京藝術大学非常勤講師/一級建築士
1983年ドイツ生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院修士課程修了。カヒーリョ・ダ・グラサ・アルキテットス(リスボン)、ノイズ(東京/台北)を経て2016年独立。2011年より東京藝術大学非常勤講師、2023年より東京理科大学非常勤講師を兼任。

DOMINO ARCHITECTS
デザインの実践と理論の両面から歴史や文脈への接続を試み、情報と物質、デジタルとアナログ、ハイテクとローテクを相対化するような設計を手がける。その活動はさまざまなチームとの協働によって形作られ、建築、インテリア、プロダクトデザイン、リサーチや執筆、教育まで多岐にわたる。

レポート:山崎泰/ジャーナリスト

デザインへの関心から丹青社に入社。1997年に社内新規事業「Japan Design Net(JDN)」立ち上げに参加。「JDN」「登竜門」など運営メディアの編集長、コンテスト企画制作ディレクターを経て2011年にJDN取締役。2025年、丹青社に移籍。取材執筆、トークや審査のコーディネートを手がける。