インテリア トレンドレポート
Vol.8 身体感覚から生まれる空間
──建築家・大野友資が考えるオフィスのかたち
共創を誘発する空間、SHIBUYA QWS(シブヤキューズ)
コロナ禍前の2010年代後半は共創という概念が普及し、そのための空間が様々な施設に生まれた時期だった。新たな事業や商品を生むために、組織内外の多様な人が集まり、アイデアを出し議論をしモックアップを作り発表しフィードバックを得て改善する。共創と呼ばれる、こうしたオープンでダイナミックなPDCAサイクルが、ビジネスの突破口になることへの期待が高まった。コロナが冷水となったが、今となってはオフィスに共創のための空間を取り込むことは当たり前なことになっている。

Image courtesy of Domino Architects and Studio Xxingham
2019年、渋谷駅直結の商業施設「渋谷スクランブルスクエア」内に誕生した共創施設「SHIBUYA QWS」。2600平米に及ぶ広大なワンフロアを活用し、多様な人々が出会い、アイデアを交わす場として注目を集めた。「設計当時は、誰がどのように使うか、新しいタイプの施設ということもあり、まさに手探りのプロジェクトでした」と振り返る。

Image courtesy of Domino Architects and Studio Xxingham
そこで、特定のスタイルを持たないこと、ニュートラルでロングライフ、普遍性や公共性を持った空間を目指すこととした。そして、素材に正直になろうと考えたという。「このビルの基準階の施工費とほぼ同等のコストで、どれだけ新しいことができるか考えました。チャレンジングなことはほとんどしていません。シグニチャーとなるマテリアルもないし、施工方法もこれまでと同じ。定番と言われている建材の新しい組み合わせ方や使い方を、ひたすら丁寧に施工者と再考していきました。」。

Image courtesy of Domino Architects and Studio Xxingham