インテリア トレンドレポート

Vol.8 身体感覚から生まれる空間
──建築家・大野友資が考えるオフィスのかたち

建築からインテリア、プロダクト、リサーチ、教育まで、幅広い活動を展開するDOMINO ARCHITECTS(ドミノ・アーキテクツ)。代表の大野友資さんは、ドイツに生まれ、東京大学で建築を学び、建築事務所NOIZ(ノイズ)等を経て2016年に独立した。設計とは「プロジェクトにまつわる文化や文脈を観察することと同義」と語る。大野さん自身のオフィスと大型の共創施設「SHIBUYA QWS(シブヤ・キューズ)」、エンジニア集団「nomena(ノメナ)」のスタジオという3つの事例を通して、働く場所をどのように考えて設計したか聞いた。

レポート:山崎泰/ジャーナリスト


素材と感覚の実験室、DOMINO ARCHITECTS

大野さんのオフィスは代官山の西郷山公園近く、昭和の趣が残る集合住宅の一角にある。緑あふれる庭と大きな窓が印象的で、都市の喧騒を忘れさせるような静けさが漂っている。「以前は渋谷のシェアオフィスにいて、仕事の関係も多かったので、周辺で物件を探しました。窓から見えるナツメヤシが、夏は茂って日差しを遮り、冬は葉が落ちて日差しが入ることも魅力でした」と話す。

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この空間には、収納と打ち合わせスペースを仕切るL字型の壁がある。原状復帰が必要ないこの物件で大野さんが新しく建てたものだ。その壁の木口には鏡が貼られてる。姿見なんですか?と聞いた。「薄い独立壁の木口があまり好きではないんです、構造物としての存在感が中途半端な感じがして。木口に鏡を貼ることでその違和感を解消できないかなって。どのように自分が感じるか観察したかったんです」。

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