Vol.11 オフィスビルに杉の丸太が連なる
―自然をオフィス化する川島範久の設計思想
建築と材料が循環する新しい設計思想が生まれる
サステナビリティについて、川島さんから面白いたとえ話を聞きました。
「野営するときの木材の使い方は2つあります。雨風を除けるテントの支柱に使う、という構造的な解決方法、これは環境に対してパッシブな手法です。もうひとつは焚き火の燃料に使う、エネルギーとして消費する方法、これはアクティブな手法です。省エネルギーの観点からは、アクティブに頼る前にパッシブに取り組むべきだと言われています」

川島さんが最近まで取り組んでいたのが、大阪ガス実験集合住宅 NEXT21の504住戸のリノベーションです。1993年に竣工したNEXT21は、スケルトン・インフィル、建物緑化など当時としては意欲的な仕組みを採用しています。ここで川島さんは、淺沼組名古屋支店ではできなかった挑戦をしています。

「既存の建材全てにラベルを付けてデータベースにまとめ、それを再利用する計画にしました。とても大変でしたが、リサイクルではなくリユースを追求するために必要と考え取り組みました。そして、間取りは中軸に大空間を持つ構成としました。これもガランドウかもしれませんね」

自然素材、自然換気、素材の貯蔵庫、フレキシビリティ、パッシブとアクティブの融合、建材のデータベース化によるリユース。こうした川島さんの「自然とつながる建築」は、人的資本経営、サステナビリティやウェルビーイングへの注目という社会背景とともに、ますます注目されていくでしょう。
写真(淺沼組名古屋支店すべて)=鈴木淳平
川島範久
Norihisa Kawashima
建築家|一級建築士|博士(工学)
川島範久建築設計事務所 代表|明治大学理工学部建築学科 准教授|ノルウェー科学技術大学 客員教授(Adjunct Professor)
1982年生まれ。建築家。博士(工学)。2005年東京大学工学部建築学科卒業。2007年東京大学大学院修士課程修了。2007~14年日建設計。2012年UCバークレー客員研究員。2016年東京大学大学院博士課程修了。東京工業大学助教などを経て、現職。2014年「NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」にて日本建築学会賞(作品)、2024年「GOOD CYCLE BUILDING 001」にて日本建築学会作品選奨を受賞など受賞多数。主著に『環境シミュレーション建築デザイン実践ガイドブック 自然とつながる建築をめざして』(彰国社)など。
レポート:山崎泰/ジャーナリスト
デザインへの関心から丹青社に入社。1997年に社内新規事業「Japan Design Net(JDN)」立ち上げに参加。「JDN」「登竜門」など運営メディアの編集長、コンテスト企画制作ディレクターを経て2011年にJDN取締役。2025年、丹青社に移籍。取材執筆、トークや審査のコーディネートを手がける。