インテリア トレンドレポート

Vol.11 オフィスビルに杉の丸太が連なる
―自然をオフィス化する川島範久の設計思想

今回は建築家・川島範久さんのオフィスビル考を紹介します。ケーススタディとなるのは築30年となるビルの一棟リノベーション。杉の丸太が貫き、土と緑をまとわせた川島さんの設計思想は、オフィスビルにもサステナビリティやウェルビーイングの要素が不可欠になった時代を象徴します。

レポート:山崎泰/ジャーナリスト


自然と同化して生まれ変わった築30年のビル

川島範久さんは建築をさまざまな「循環のステージ」として考えられないかという、新たな設計思想に取り組む建築家として注目されている。特にオフィスビルは多くの物件がリノベーションの時期を迎えているが、単なるリニューアルではなく、「素材貯蔵庫」としてマテリアルフローの発想を取り込むことで、より未来につながる建築に再生できると話します。

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そんな川島さんの設計思想を代表する作品の一つが、淺沼組との共同設計による「GOOD CYCLE BUILDING 001|淺沼組名古屋支店改修PJ」で、このリノベーションビルはすでに地域のシンボルとなっています。

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淺沼組名古屋支店「GOOD CYCLE BUILDING 001」

土と木と緑が溢れるファサード、特に2階から最上階まで垂直に連なる杉の丸太には驚きます。ガラスウォールやタイル貼りのビルが多い都市空間では特に目を引く外観です。深い庇が季節ごとの太陽光を適度に調節し、オフィスビルには珍しくベランダがあり窓を開けて室内から出ることができます。もとは築30年、名古屋市中心部にある鉄骨造8階建の建築でした。

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窓が開きベランダに出ることができる

「淺沼組さんから『既存建物のリニューアルを新事業として展開したいので助言をもらいたい』という相談を受けたのが始まりでした。環境配慮・温熱対策・ゼロエミッションなどは今後当たり前の設計思想になると考え、その先にあるバイオフィリック・循環・生命などをテーマとして提案しました」という川島さん。2021年9月の竣工から時間が経った今でも、その先見性は全く色褪せません。

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「元々はガラスウォールの建物だったことが信じられないかもしれませんね。このような新耐震基準に対応した中規模ビルは日本中にたくさんあります。経済寿命は尽きて、快適性や環境配慮は現在に適合しませんが、建築的な構造寿命はまだまだあります。これらをストックとして活用することはサステナビリティの観点からもビジネス的にも意味があることだと考えています」