Vol.11 オフィスビルに杉の丸太が連なる
―自然をオフィス化する川島範久の設計思想
「ガランドウ」はパッシブデザインとフレキシブルな空間の象徴
川島さんが「自然とつながる建築」という考えに至った背景は3つあります。1つが大学時代の恩師で建築家・難波和彦さんの「箱の家シリーズ」の研究。2つ目は就職した日建設計での大規模建築の経験。3つ目はカリフォルニア大学バークレー校へ留学し、最新のサステナブル建築デザイン、環境シミュレーションを学んだことでした。

「まずは難波さんの影響がすごく強いです。それを自分なりに発展させてきました。サステナブル建築デザインのきっかけです」
難波さんの「箱の家」はガランドウな一室空間がベース。まずは南面大開口の箱型の空間に、深い庇での日射制御や自然通風などのパッシブデザインの観点が基本となる住宅のシリーズで、その発想は各方面に大きな影響を与えました。学生だった川島さんもその基礎が身に染みていると話します。
「日建設計ではソニーシティ大崎(現:NBF大崎ビル)という大規模オフィスビルの設計に携わりました。箱の家と規模は異なるのに両者とも環境や自然との関係、そしてテクノロジーを大事だと考えていることは共通しています。大規模ビルの建築によって街の光や風向き、周辺の環境が変わることを実感し、葛藤も感じました」。

「オフィスビルの内部空間はできるだけ広くワークプレイスを確保しフレキシブルであることが求められます。その意味では箱の家のガランドウというコンセプトと似ているんです」

パッシブなデザインの典型である「箱の家」、そのコンセプトのスケールを変え、用途を変えて発展させる。そして川島さんはオフィスビルの内部には自由な余白を残し、ビルが街や環境と接する部分は相互の関係をより良いものとする。そんな設計思想に至ったと言います。