Vol.11 オフィスビルに杉の丸太が連なる
―自然をオフィス化する川島範久の設計思想

建築は違う用途に転用できる「材料貯蔵庫」

「建築物をマテリアルフローの通過点、材料貯蔵庫としてとらえました。自然素材と人工素材を分離可能にデザインし、それぞれが寿命を終えた後にモノマテリアルとして回収できます」

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GOOD CYCLE BUILDING 001|淺沼組名古屋支店改修PJ 断面パース・マテリアルフロー図

建築が「材料貯蔵庫になる」―一言ではピンとこないかもしれません。例えば、と川島さんはファサードで目を引く杉の丸太を例に挙げます。

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「この杉は淺沼組と縁があって入手できた吉野の森の杉を使っています。持続可能な森林経営による木材です。上階に行くほど細くなっているのが分かると思うのですが、一本の丸太の端材を極力少なくするためです。ファサードとして使いながら自然乾燥させて、将来、内装や家具などへ転用することを想定しています」

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さらにビルの表面の仕上げに用いた土は、淺沼組の建設現場の残土を活用しています。「建築現場の不純物が含まれ除去に手間がかかるのですが、ふるいがけで活用可能な資源にして、土を塗る工程に社員の皆さんに参加して頂きました。仕組みを知り、愛着を持ち、メンテナンスも自ら行える体制構築を目指しました」

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「建築を都市における新たなマテリアルフローの要として再構築するとともに、光や風、土や木、植物といった変化する自然とつながる環境として、人にも地球にも良い建築とはどのようなものか示すことができたのではないかと考えています」

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「見えるところ、触れるところ、全ての材料に背景があって、サステナブルに繋がってゆく。建築が入り口になり思いが広がっていく。そのように何かと繋がっていると、人も謙虚になれると考えます。どれだけ機能的に優れたものを作っても、人間の価値観や行動に変容がないと『性能が高く省エネルギーだから、たくさん使っても良い』となりかねません」

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この淺沼組名古屋支店は、2022年に築30年以上のオフィスビル全体の改修において日本初となるWELL認証のゴールドを取得しました。川島さんと淺沼組の取り組みが客観的にも高い評価を得たことの証左でしょう。