Vol.10 オフィスと工場を「デザインハウス」に変えたイトーキの挑戦

地域や次世代へ貢献する意義

湊社長は「デザインハウス滋賀」を地方創生のビジネスモデルとして育てたいとも語る。
こんな場所で働きたい、人と関わりたいと思う空間として、ものづくりの場が次世代に魅力的に見える場所であることが必要だと考えている。

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滋賀県知事の三日月大造氏は「工場誘致の全国のモデルになればと期待している。ベトナムからの人材の誘致や地元の中小企業との連携もしている。今後は滋賀県に高等専門学校を設立し、ものづくり人材を育成していく。その受け入れ先の一つがイトーキ」と話す。

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イトーキでは近江八幡市役所の改装にも、構想の段階から関わった。近江八幡市長の小西理氏は「5年ほど前から庁舎の計画では若手職員をグループ化して参加させ、未来の働き方をイトーキと協業して進めてきた。行政だけの発想は何かと固くなってしまう。そこを打破し、近江八幡で働きたいと思える場所としたいと考えた」と話す。

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近江八幡市では若手職員を100人以上、イトーキの大阪オフィスに派遣、視察や議論の機会を設けた。改装後はグループアドレスなど、職員同士のコミュニケーションが潤滑に進んでいると市長は働く場の改革を評価する。

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オフィスや工場の変化は今働く人だけのためではなく、今後の採用や企業、地元の未来も担う、重要な転機となることを実感した。

これまでもイトーキの工場見学は人気があり、年間で約1200人が訪問している。その対応のための専任チームもつくり、現在は3名で見学プログラムをまわせるまでになった。見学予約は2ヶ月待ちだ。

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「働く場をつくる企業としてこのデザインハウスはオープンソースとして、多くの人に知ってもらいたい。異業種交流や就職先を探している教育関係者、海外からの視察、さらには子どもたちなど、広く受け入れをしている」とイトーキコーポレートコミュニケーション本部 本部長川島 紗恵子氏は説明する。

業務効率だけではない、価値創出を試みたイトーキの近江八幡工場のリニューアル。オフィス事業業界に大きな一石を投じそうだ。

レポート:本間美紀/ライフスタイルジャーナリスト

インテリアの専門誌「室内」編集部を経て、独立。家具、インテリア、デザイン、住まい、キッチンなどの取材執筆、セミナーなどを手掛ける。ドイツ、イタリアなど海外取材も多数。著書に「リアルキッチン&インテリア」「リアルリビング&インテリア」「人生を変えるインテリアキッチン」(小学館)など。