インテリア トレンドレポート
Vol.6 デザインファニチャーに見る
オフィスでの「個」の在り方
2024年の新作発表会で「集中、リフレッシュスペースの拡充」をテーマの一つに掲げたのが内田洋行だ。ITシステムと多岐にわたる職種、業務をつなぎ、大規模なオフィス設計と得意とする同社だが、事務系だけではなく開発や研究職など集中を必要とする職務や、職場内でのプライバシーなど、オープン化するオフィスの新しい傾向を次々とつかんでいる。

新作の中で発表された同社が扱うアメリカ・スチールケース社のCO-Creation(コ・クリエーション)デスクシステムは、日本、アジア向けに発表されたもので、さまざまなパーツを付加することで職種にあった個人ワークの環境に調整できる。もともと日本のオフィスというのは上長を中心に島型に並べられ、その習慣が長い。その常識を打破しながらも、パーソナルデスクの考え方を取り入れた製品だ。
同じ内田洋行では集中とリラックスの家具の一つとして、2023年に発売された「ELMAR(エルマー)」にも注目したい。2023年に急逝し、惜しまれたデザイナーの藤森泰司さんのシステムファニチャーで、国産ナラ材の短尺材や端材などを有効活用し、冷たくなりがちなオフィス空間に森のような温かな雰囲気をもたらす。

「エルマー」はしなる背もたれを持つ木のチェアからスタートしたブランドで、素朴なデスクなど、家庭で使っても良さそうな、穏やかなデザインだ。
同社オフィス商品企画部で開発を担当した山田聖士さんは、ビッグテーブルは素材や強度の問題が残る。それならシンプルにデスクをいくつか組み合わせるアイディアに至った。デスクを寄せ合うと集成無垢材の天板の間には、スリットが自然に生まれる。

スリットはケーブル配線やコンセントブロックなどのオプションを活用できるが、注目したいのは、ここにウッドのデスクトップパネルをはめてパーティションにする仕組みだ。温かみある木のパーティションは高さ35cmと程よい高さで、目線を交わしながらも手元の作業は見えない。

パーティションというと、アクリルや完全に遮断してしまうものが多い中、まな板を立てたようなユーモアもあり、優しさも感じる「個」のつくり方に、藤森さんの人柄が偲ばれる。
「デスクの使い方はワーカー自らが想像していくアイテム」と山田さんは話す。
