Vol.12 バイオフィリック空間、写真で実現
写真を「アート」として飾らない
キヴィではこれまで、オフィスなどに自然写真を取り入れる仕事を続けてきた。その中で、写真そのものにもバイオフィリックな効果があるのではないか、と考えるようになったという。
「写真であればメンテナンスもいらないですし、室内の中にいるのに、遠くを見るような感覚になったり、壁なのに空間に奥行きを感じられたり。植栽とは違う効果があります」

自然そのものを室内に持ち込むのではない。自然を見たときに人間の中に生まれる感覚を、写真によって引き出そうというのである。キヴィはこれを、自然を「置く」だけではなく「感じる」オフィス、と表現する。
提供する写真は、国内外でトレッキングをライフワークとする写真家たちに撮影されたもので、オフィスだけではなく公共空間、飲食店、宿泊施設、医療施設といった多様な空間を対象にしている。
さらに写真は色の再現性に優れ、滑らかな階調を持つ「銀塩プリント」を採用して、自然の機微が表現できるように配慮している。

では、自然の写真なら何でもいいのだろうか。話を聞いていくと、そこにはかなり繊細な選択があることがわかった。
例えば動物の写真はなるべく避けるという。人によって好き嫌いが分かれやすく、動物の種類によっては強さ、可愛らしさなど、企業や職種に特定の印象を与えてしまうからだ。雄大な山をドーンと見せるような王道の風景写真とも少し違う。

「写真家の主張が出過ぎてしまうと、鑑賞する写真になってしまう」と選択の機微と基準がキヴィの腕の見せどころだという。
木々の細かな変化、水の流れ、霧、森の奥行き。キヴィいうチーム名にも、日本語の「機微」や自然の小さな移り変わりへの視点が込められているという。

オフィスは美術館ではない。毎日長い時間を過ごす場所だからこそ、作品として強く主張するよりも、ふと目を向けたとき、視線が自然の奥へ入り込んでいく。そんなニュートラルさを大切にしている。
そして実際に自然の景色がもたらす科学的な効果も検証されている。ロバートソン・クーパー社による「ヒューマンスペース」(2015年)というグローバル調査レポートでは自然の景色が働く場に近いと、生産性が6%、創造性が15%、幸福度が15%、それぞれアップすると報告されているという。