インテリア トレンドレポート
Vol.9 サステナビリティの新しい解決を生む、
オフィス空間の木の家具
オフィスインテリアへの木材の導入は働く人のウェルビーイングに効果的。結果、オフィスでは生産性が向上するとも言われています。そんな木材ですが、量を使うオフィス家具の世界では、サステナビリティの観点からの課題解決につながると期待されています。そんな課題の解決に取り組む最新の2事例を紹介します。
いずれも異例とも思える企業同士のコラボレーションによる、新たな木質化へのアプローチとして注目です。
レポート:山崎泰/ジャーナリスト
北海道産材が縁結び、木のオフィス家具の新たなる取り組み
オフィス家具のイトーキと木製家具のカンディハウスが共同で家具を開発します。両社は2024年より北海道にて協業を開始し、木の心地よさをオフィスに取り入れる提案を推進しています。今後は全国での提案を強化するとともに、家具製造過程で生じる北海道産材の端材や未利用材を活用した家具開発を進め、2026年の製品化と受注拡大を目指します。
出社回帰時代のオフィスに「地域材×デザイン」
オフィスがワーカーの可能性を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上のための中核の場として再定義されつつある今、イトーキは家具納入だけでなく、空間デザインや働き方コンサルティングを通じた付加価値の高いオフィス空間を提供しています。
カンディハウスは住宅市場縮小を背景に法人営業強化を図り、かねてより評価の高い木製家具を含めた木質感豊かなオフィス提案をしています。一方で2014年から北海道産広葉樹の活用を進め、当時8%だった使用率を10年で80%まで高めました。
そこで両社は、それぞれの強みを掛け合わせて新たなオフィス市場向け家具を開発していこうと協業を始めました。イトーキの空間デザイン力や人間工学に基づく製品開発力、カンディハウスの北海道産材を活かした高いデザイン性と使い心地を誇る家具づくり。特に北海道産の広葉樹は、美しい木目や温かみある風合いがオフィスに安心感と誇りをもたらし、ブランディングやウェルビーイング向上に寄与すると期待されています。
2026年の製品化を目指して共創が始動
この数年のことですが、国産材・地域材の活用が急速に注目を集めています。背景にあるのは、ウッドショックによる輸入材価格の高騰や、2024年度から導入された森林環境税です。カンディハウスの家具製造過程で出る端材や未利用材を活用して、新たな製品を両社で開発し、「国産材回帰」「サスティナブルな製品開発」の実践を目指すのがこの取り組みです。
イトーキとカンディハウスは2025年4月に北海道・旭川に本社を置く荒井建設のオフィス改修プロジェクトで既に協業しています。同年7月にイトーキのデザイナー・開発・営業メンバーが旭川のカンディハウスの工場と木材加工現場を視察するなどして、製品開発の一歩をスタート。今後は2026年のテーブル・デスクの製品化を目指して、構成部材の一部に端材や未利用材を活用する方向で技術的検証と意匠性の調整を進めます。